松尾宗弘(療術師)
整体師というと、骨格を整える人だ……とは限りません。現に私は、あまり骨は触りません。それより筋肉です。
筋肉の状態が良くなければ、せっかく骨格を矯正しても、またすぐに元の位置に戻ってしまうからです。なにしろ骨格は、筋肉に引っ張られているのです。常に。
だから筋肉の状態は、良好に保っておくべきなのですが、さて、良好な筋肉とは?
それは、柔軟な筋肉、という意味です。力を入れるとキュッと引き締まり、硬くなるけれど、力を抜くとダラリと緩み、柔らかくなる。これが良好な筋肉です。
ところが、力を抜いている時にまで、硬いままの筋肉がありますね。いわゆる凝りが、これに該当します。外傷や、下手な筋力トレーニングによっても、こうなります。
この、常に硬いままの筋肉、つまり柔軟性の低い筋肉は、とにかく危険です。なにしろ、十分に伸びないのです。いつ断裂(肉離れ)を起こすか、分かったものではありません。
そんな筋肉が、腰にあったら、どうでしょう? 当然、腰で肉離れを起こします(その危険が大きい)。これが典型的なギックリ腰です。ギックリ腰とは、典型的なものは、骨格の異常や故障ではないのです。
筋ポンプを、ご存知でしょうか。これが無かったら、静脈やリンパは十分に流れません。
力を入れると、筋肉は引き締まり、そこを通る静脈やリンパ管を圧迫します。すると血液やリンパ液が押し流されます。力を抜けば筋肉は緩み、静脈もリンパ管も広がり、そこに血液やリンパ液が流入します。
再び力を入れると、新たに流入した血液やリンパ液が押し流されます。これが繰り返されるのです。筋肉がポンプのように作用するのです。
なお静脈やリンパ管には弁があり、流れの向きは一方のみ。逆流はしません。
では、力を抜いた時にも硬いままの筋肉だと、どうなるのでしょう。十分に緩まないのですよ。
当然、静脈もリンパ管も、ほぼ圧迫されっぱなしです。十分に広がらないので、液が流入しにくく、よって筋ポンプが作用しない、と言えます。
そして筋肉に圧迫されるのは、動脈も、です。動脈内の血液は心臓による圧力で流れるのですが、筋肉に圧迫されてしまっては、これも十分に流れません。
したがって状態の悪い筋肉は、循環不良とセットです。
この循環不良が、どれほどの病の元になるでしょうか。たかが凝り…などとは言えない事が分かります。
もみ返しについても、併せてお読みください。
©松尾宗弘