松尾宗弘(療術師)
体をもむ等した後、痛みが出る事があります。読者の中には、きっと経験者もいらっしゃる事でしょう。それこそ、寝込む程の痛みを経験されたかも知れません。
この痛みを「もみ返し」と呼んでいます。
揉み返し。それは、好転反応であると言われます。歓迎すべき事だ、と。
ハッキリ言います。これは嘘です。揉み返しとは、ただ患者の身体の組織を傷めただけです。主に筋肉を傷めたのです。
もし、コリをほぐす目的の施術で揉み返しを起こしたなら、本末転倒。コリは余計に酷くなるでしょう。施術直後は、ほぐれたとしても。
この事について、以下、説明します。併せてこちらも読んでいただくと、理解しやすいかと思います。
コリは主に、筋肉の問題です。筋肉が凝り固まっているのです。それを軟らかくしたいから、強い力を掛ける。これは、とても分かりやすい考えです。
砂糖だって、固まってしまったら、強い力で押したり揉んだりして、ほぐしますね。優しく撫でても、どうにもなりません。
砂糖は、それで構いません。しかし筋肉に同じ事をするのは、安易というものです。組織を壊してしまうからです。
組織を壊すから、その場は確かに、軟らかくなる(コリがほぐれる)のです。しかし生きた人の組織です。壊されたら、治さないといけません。
治癒は自然に始まるのですが、この時の痛みが、もみ返しです。体はしばしば、損傷した所を治す時に熱や痛みを発します。捻挫が分かりやすいですね。揉み返しが起きたら、それは組織が傷んだ証拠と言えます。
筋肉の場合、傷んだ箇所の周辺にカルシウム分が沈着して、治って行きます。カルシウムですから、筋肉は硬くなります。硬くなれば動きが制限されて、傷が治りやすいのです。
しかし硬くなるという事は、凝るという事に他なりません。
そのコリをほぐそうとして、また強い力で施術すると……悪循環の始まりです。次第にコリが広がって行く、つまり全身的に柔軟性を失って行くでしょう。
柔軟性が低い筋肉が危険である事は、こちらに書きました。読んでいただくと、強い力による施術はギックリ腰の原因になり得る、と分かっていただけると思います。
ギックリ腰だけではありません。全身の循環不良(血液・リンパ液)を惹き起こす可能性もあります。そして循環不良は、様々な病の元になります。
ただ、強い力での施術が避けがたい場面も、時にはあります(小児喘息の発作を止めるときなど)。しかし、その後の筋肉ケアが出来ないのであれば、強い力での施術は、やはり望ましくありません。
©松尾宗弘